アンチェイジング(抗加齢)医学の世界に「三筋後退」という言葉があります。これは腹筋、上腕筋、太ももなどの三つの筋肉が加齢とともに衰える現象を「参勤交代」をもじって表現した言葉です。また、加齢だけではなく筋肉は使わなければ若くても「三筋後退」が進み猫背や腰痛に悩ませれたりします。
居合いの上級者は動きに無駄がなく、偏った箇所の筋肉に頼らず、体全体を使い伸び伸びと刀を扱います。 刀は、一見腕の力で振るように見えますが、身体全体を使う動きです。 従って一歩踏み出し真っ向に振り下ろす動作一つとっても体全体の筋肉、骨格を上手く使う必要が あります。これは年齢、性別の区別なく居合いの稽古を重ねるに従い自然と身に付いて来ます。
居合いは、自分に合ったスピードで動作を行いますので、体力に自身のない方でも、少しづつ必要な筋肉を作る事ができます。
正しい姿勢とは学校で教わった、気を付けの姿勢とはやや異なります。居合いでの正しい姿勢は頭頂から踵のやや前の位置を一直線で結びます。この時膝を少し緩め骨盤をやや前傾させ肩も落とします。ちょうど骨盤の上に上体を楽に載せた感じです。こうすると感覚的には前傾したように感じますが、実際は立っているのに必要な筋肉以外使っていないので、案外楽に長時間立っていられます。
居合いの動きを通して身に付く正しい姿勢は、 デスクワークの多い方、長時間無理な姿勢を強いられる職業の方にとっては、姿勢の悪さから 生じる骨格・筋肉・内臓の余計な負担を軽減させてくれます。 姿勢の悪さは腰痛、肩こりの一因と考えられています。居合いの正しい姿勢は、身体にかかる負担が少なく、 内臓の働きもスムーズになります。
居合いの稽古では敵対動作を常に意識して行います。敵対動作の敵とは自分のイメージした相手です。 従って相手に合わせた無理な動きを作る必要がなく、各人の体力、上達速度に応じた稽古が 行えます。 また、これら居合いにおける動きは有酸素運動であり、有酸素運動には中性脂肪をとり、善玉コレステロール値を 上げる効果があります。 また、有酸素運動には高脂血症、高血圧、糖尿病などの危険因子の予防・治療効果のほか、持久力をつけ、 ストレスを解消するといった効果もあります。
「筋肉は、立ち座りや歩行速度など、移動能力の維持に直結する。移動ができなくなると、生活が制限され、人生の質が変わってしまう」と筑波大学の久野教授。
「リタイヤ後の20~30年を、どれだけ活動的で生きがいのある人生にできるかは、移動能力を支える筋肉の維持にかかってくるのです」
吉報がある。筋肉は、どんな年齢になっても増やすことができる、一種不思議な臓器なのだ。
適切な負荷で運動をすると、90代でも筋力は、12週間で174%増えたという研究結果が豪州で出ている「加齢で筋肉量が減るのは、細胞の数が減るからです。ところがこの研究では、筋肉面積が9%も増えた。やるのに遅すぎるということはないんです」82歳の今、50代の時より質の良い大腿筋をお持ちの、勝田茂筑波大名誉教授は言う。
(読売新聞2019年1月22日より抜粋)
シニアで入会する方は肥満が多く、立ち座りや正座が苦手です。ですから最初は大変そうですが3週間ほどすると居合いで必要な筋肉もでき始め、ほとんどの方の体重が減り筋肉量が増えるので歩き方が驚くほど違ってきます。
そうした方をみていると確かに居合いの稽古は健康に直結すると実感できますが、同時に食事など生活改善を行っている努力も見逃せない要素だと思います。