江戸時代の武芸者にとって柔術は武芸の一つでありますから、槍や棒術になど得物を使った武術でも無手の柔術であっても、基本的な体の使い方は居合や剣術などの古武道と同じす。
従って柔術を稽古することで、一人稽古の居合で曖昧であった体の運用法を明確にし、より武術としての居合の本質を知ることが出来ます。
居想会の居合の指導では「相手の中心を取る」、「刀を体の中心で扱い体を左右均等に使う」、「筋肉に頼らない柔らかな動きを目指す」等々の言葉で伝えますが、ときにはこうして相手と向き合い自分の動きを再確認するのです。
例に出して言えば、逆袈裟の斬りは右手で斬ろうと考えがちですが、巻藁など無機質なものが相手ならともかく、対人を考えるならば自分の中心から相手の中心に働きかける身体運用が不可欠でことが分かります。
これは、相手に両の腕を持ってもらい逆袈裟に斬ってみれば、正しく出来ているかすぐに理解することができるでしょう。
大概は右手ばかりが動くから相手に単純な力方向を読まれて潰され、また、体の芯からの起こりでなく手先で動いても同様となります。
こうしたことから相手の中心に向かって斬り上げ、かつ、体の軸から発する力が剣体一致となって動くことの大切さを理解することができます。