「真」の理合は自鏡流居合の「本腰」に原型があると考えられる。ただし敵との間が違う。それだけでこんなにも体の使い方が異なるところが居合の面白さだ。
体が浮き右足が前に出てゆき、同調するように刀が抜かれてゆく。右足の動きが静まるときが剣先の止まるとき。右足が動きを止めているのに剣先が走っているのは論外だ。
振りかぶりは右手に頼らず体で行うことは立ち技と同じだが、膝の緩みは使えない。だから股関節を存分に使い振りかぶる。この動作は一見無駄な動きに写るだろうが、やがて習得するであろう早い動きに欠かせない。振りかぶりと斬りをひとつの動作と考えるならば、右足を引き左足を出すという下半身の動きは、股関節を使い一瞬でも自分の体を浮かせなければままならない。
二刀目は体の使い方において最もこの形の特徴があるもので、左足を出したとき左袈裟に斬らず右袈裟に斬る。あえて逆体に体を使う意味は思いのほか深い。
逆体の体であっても、捻ること無く敵の正中線を捉える為にどう体を使うべきかを示唆しているからだ。
居合など古武道を学ぶ上で全てに言えることであろうが、まず楷書としての正確な動きを体に染み込ませることが大切である。むやみに動きの速度を速めてゆくと、無駄な動きが増幅し、修正が利かなくなってしまう体になる。居合は単なる運動ではない。自分の体を如何に制御するかを考え、正確な動きをしているかを冷静に判断するストイックな眼を持って、初めて古武道への学びの道が開けてくるのである。