稽古日記

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10月6日(火)水道橋 剣法 投稿者:関戸光賀 投稿日:2026/10/07(Wed) 10:31 No.7810
立った状態で、刀の切先を地面から一センチほどの高さに置いてみます。
私の場合、切先は完全に静止することなく、半径三ミリほどの円の中で微かに揺らいでいます。
人型ロボットは、二足で立つためにジャイロや各種センサーで姿勢を毎秒数百回から数千回ほど測定し、その情報をもとに重心位置を絶えず修正することで、ようやく立ち続けることができるそうです。

ただ立つだけでもこれほど複雑なのですから、そこに歩く、走る、方向を変えるといった運動が加われば、さらに高度な制御が必要になることは容易に想像できます。

そう考えると、人間の身体というものは実によくできています。

人間も立っているとき、実際には完全に静止しているわけではありません。ごく小さな崩れと、その修正を絶えず繰り返しながら立っています。つまり安定とは、まったく動かない状態ではなく、崩れを瞬時に修正し続けている状態とも言えます。

そして武道では、この「崩れ」を単に修正するだけでなく、逆に利用します。

動き出すとき、あえてわずかな不安定をつくれば、その崩れそのものを移動の力に変えることができます。力で身体を運ぶのではなく、崩れ始めた身体をその方向へ導くことで、無理のない移動が生まれます。

居合の形で分かりやすい例が「玉光」です。

膝を緩めながら重心を後方へ移し、相手の剣を捌きます。しかし、単に後方へ重心を移してしまえば、身体はその場に居着いてしまいます。

この形で大切なのは、身体を後方へ移しながらも、次の動きにつながる要素をわずかに前方へ残しておくことです。完全に安定した状態に収まらず、あえて次へ移れる不安定さを残しておく。だからこそ、後方に居着くことなく、直ちに前の相手へ対応することができます。

剣法の稽古でも、この考え方は常にあります。

安定した姿勢をつくってから動くのではなく、身体の中に生じる微かな崩れを利用しながら形をつないでいく。

この「崩し」をうまく使えるようになると、予備動作の少ない瞬時の移動が可能になります。そして力みや大きな重心移動が表に現れにくいため、相手からも動きの起こりを察知されにくくなります。

武道における安定とは、固まることではありません。

崩れないことでもなく、崩れてもすぐに次の動きへつなげられること。

その意味では、身体の「揺らぎ」そのものが、動きの源になっているのだと思います。

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